認知症の医療と生活の質を高める[堺市認知症医療体制]
症状に関する質問 / 指導に関する質問 / 投薬に関する質問
検査に関する質問
/ 入院に関する質問

症状に関する質問】
Q1. 物忘れがどれくらいひどくなれば、専門医療機関の受診をすすめたらよいですか?
A1.
物忘れの程度が軽くても、ご家族が物忘れを心配しているのに、ご本人には物忘れに対する自覚が乏しい時には、認知症が既に発症している可能性が強く疑われますので、鑑別診断をすすめた方がよいと思います。また、急激に物忘れが出現してきた場合、急速に進行している場合は、逆に治療可能な認知症の場合もあるので、特に早急な受診が必要です。


Q2.

家族に通帳を盗られるといった、物盗られ妄想がひどい患者さんがいますが、物盗られ妄想は、いつまでも続くのですか?

A2.
物盗られ妄想は、比較的初期から中期の初め頃の、特に女性患者さんに高頻度にみられます。進行すると消失することが多いです。妄想の対象は、一番そばで介護している方に向くため、事前に、主介護者に物盗られ妄想が出現する可能性を伝え、その兆しがみられはじめた時に、デイサービス等の回数を増やし 、介護者との距離を作ることで、悪化を防ぐことができる場合もあります。物盗られ妄想に伴い、興奮や易怒性が亢進する場合には、抗精神薬での治療が必要な場合もあります。


Q3.

物忘れ以外で発病する認知症もありますか?

A3.
初老期発症のアルツハイマー病では、物忘れよりも先に、視空間認知の障害で発病する場合もあります。具体的には、ネクタイがうまく結べなくなったり、エスカレーターに乗る時に、躊躇したりするようなことが、物忘れが明らかになる前にみられる場合があります。
また、前頭葉が障害されるような認知症では、物忘れは目立たないが、配慮のない発言や行動がみられるようになったり、同じことを繰り返し行うようなったり、生活リズムがパターン化してそれを乱されると、興奮したり、抵抗するといった行動変化で、発病する場合もあります。

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指導に関する質問
Q1.

薬の服用以外に、特に指導すべきことはなんですが?

A1.
目新しい訓練をしたりするよりも、規則正しい活動的な生活をすることをすすめます。
家庭で、手持ち無沙汰で、自分からは何もしようとせず、無為に過ごしている時間が増えてくれば、デイサービスやデイケアの利用をすすめます。

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投薬に関する質問
Q1.

塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)の効果について、どのように説明すれば、患者・家族が理解、納得しやすいですか?

A1.
十分な説明をしていないと、内服しても何も変わらないといって、内服を中断してしまう方が多いです。アルツハイマー型認知症が、進行性の脳変性疾患であることを伝えたうえで、進行を緩やかにする薬であり、進行を止めたり、改善する薬ではないことを、正確に伝えます。ご家族には、変化がなく生活できていれば、効果があると判断すべきであることも説明が必要です。そのためには、1年に1度程度、認知機能の簡易な検査(HDS−Rなど)で確認されるのも、良い方法と思います。


Q2.

塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)を10mgに増量するタイミングはいつですか?

A2.
適応上は、高度アルツハイマー型認知症とされています。高度とは、家の中でもトイレに迷ったり、家族の顔がわからなくなったり、排泄の失敗が目立つ状態です。それ以外にも、初老期発症の方で、進行が早い方などには、10mgへの増量を検討すべきでは、と言われています。


Q3.

認知症患者さんに、使用しないほうがよい薬はありますか?

A3.
高齢の患者さんは、複数の医療機関に通院していることが多いので、必ずお薬手帳を作り、薬剤の重複を避けることが必要です。消炎鎮痛剤や睡眠導入剤、抗不安薬や、抗コリン作用のある薬剤は、せん妄を誘発し、認知症の症状を増悪させる可能性があるので、十分に注意して使用する必要があります。

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検査に関する質問
Q1.

初期の鑑別診断には、MRIや脳血流SPECTが必要といわれますが、費用はいくらくらいですか?

A1.
通常、専門医療機関での認知症の鑑別診断は、問診・診察の他、頭部MRIまたはCT、物忘れの有無や、程度を調べる神経心理学的検査、血液検査等を行います。それらの検査で、鑑別診断が困難な時には、脳血流SPECTを行う場合もあります。 費用は表に示します。

(表) 認知症鑑別診断関連 費用
  点数 75歳以上
(後期高齢者)
一般:1割負担
70〜74歳
2割負担
70歳未満
3割負担
鑑別診断(MRI) 約7000点 7000円 14000円 21000円
鑑別診断(CT) 約6800点 6800円 13600円 20400円
SPECT 約8600点 8600円 17200円 25800円
MRI 約1800点 1800円 3600円 5400円
CT 約1600点 1600円 3200円 4800円
注:費用は所得、制度利用によって負担割合が変わる場合があります。


Q2.

脳血流SPECTの実施を検討するのは、どんな時ですが?

A2.
初老期発症のアルツハイマー病は、初期にはMRIやCTでの脳萎縮は目立たないことが多いです。しかし、その時期に、既にSPECTでは広範な血流低下がみられ、鑑別診断や進行の予測に役立ちます。一般的には、比較的初期でMRIやCTでの脳萎縮は目立たないが、物忘れがみられる場合の鑑別診断に役立ちます。

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入院に関する質問
Q1.

入院治療が必要な場合は、どんな時ですか?

A1.

まず第一は、せん妄が合併した時です。昼夜の逆転や、脱水症、鎮痛剤や睡眠導入剤の使用などから、せん妄を併発し、急速に幻覚・妄想や興奮が増悪した場合は、入院治療で、せん妄の治療をすることが必要です。
物盗られ妄想や、しっと妄想などが主介護者に向き、攻撃性や易怒性が高まっている時は、入院治療で、介護者と患者さんの距離を離すことで、落ち着くことも多いです。


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